ビジュアル詩系総合芸術サイト「エデンの扉」

恋人たちの季節 第五章 - 詩集

恋人たちの季節 第五章

 

恋人たちの季節 第五章

Copyright(C)2014 Seine Lukis Allrights reserved.

草原の輝き "Splendor In The Grass"

田舎には真実の自然が無い。
必ず誰かの手が加えられている……。

僕と彼女が通った小学校は既に無く、草野球のグランドに姿を変えていた。
幸いにも校庭のブランコはまだ残されている。

彼女が僕の手を引いてブランコを指差した。
小さい頃と同じ、まるで子供のような笑顔に出逢うことができた。

光と風と水、そして、この大地があれば僕たちは生きてゆけるんだ。
祖父も、父もこの自然と共存して生きてきたんだ。そして僕も。

何も無かった荒地に若葉が茂り、生命の息吹を感じさせてくれる。
僕は都会に出て、何が必要なのか、やっとわかったんだ。

田舎には真実の自然が無い。
これから僕と彼女が新たなる真実を刻んでゆく。
そう、この輝きの中で。

僕が毎朝早起きする理由

朝、ペットを散歩に連れ出すのが僕の日課だ。
毎朝、わんわん鳴いて僕を待っている。可愛いものさ。
始めは買主である母親が散歩に連れ出してたんだけど、
いつの間にかそれは僕の仕事になった。
もちろん、遅刻常習犯である僕には苦痛だった。
だけど、早起きすると良いことがあるんだ。
今では彼女と軽く会釈するまでになった。

今日、会社の新人研修が終わり、
僕の部署に配属されたのは、
ジョギングで綺麗な汗を流していた彼女だった。

風が運んでくれたもの

爽やかな風があなたを変えてゆく
少女から大人へ あなたは美しく
この日が来るのを僕は恐れた
少女の心変わりを気にして

爽やかな風があなたの服を濡らす
穏やかな波が 突然大きく
この日が来るのを僕は待っていた
僕はあなたに 心ときめかせ

爽やかな風がふたりに囁く
また来年も ふたりでおいでと
あなたが僕に近づき そっと手が触れた
今日の気持ちを きっと忘れない

爽やかな風がふたりを変えてゆく……
友達から 恋人に
爽やかな風が未来を変えてゆく……
今日の気持ちを ずっと忘れない

恋愛上手 "Killing Me Softly"

「私たち、恋人同士に見えるかしら?」
 君は片方の口元で静かに笑う。

「僕が嫌いになったのかい?」
 僕は哀願を言葉に込める。

「他に好きな人が出来ただけのことよ」
 君は悪気の無い笑顔を浮かべる。

「悪いのは私じゃないわ」
 君は言葉を続けた。

「僕が悪いの?」
 僕は声と拳を震わせる。

「あなたより好きな人が出来ただけのことよ」
 君の微笑みが僕に止めを刺した。

飲みかけのジュースのビンをゴミ箱へと、
君は躊躇いもなく投げ捨てる。

失いたくない僕と、玩具に飽きた君。
君の知らない僕と、僕の知らない君が、
ガラスの破片みたいに、今、砕け散る。

うたた寝 "Close To You"

初めて出会ったときに大喧嘩して、
次に出会ったときに恋に落ちた。
周りのみんなは反対したけど、
彼の両親はとても優しかった……。

梅雨の晴れ間に洗濯をして、
大好きな石鹸の香りを風が運ぶ。
周りのみんなは反対したけど、
ひとは見かけによらなかった……。

焼きたてのクロワッサンの香りが、
私の鼻腔をくすぐる。
「そんな所で寝てると風邪引くぞ」
彼の声が私を迎えに来てくれた。

雨降りは嫌い "She dislikes a rainy day"

「今度の週末は雨だって……」
彼女の目から雨が降り出しそうだ。
休みが合わない僕たちの久々のチャンスだった。
「仕方がないよ、映画でも観に行こうよ」
彼女は買ったばかりの洋服をぼんやりと眺めて僕の声は届かない。

「明日はやっぱ雨だって……」
僕は天気予報の最終確認をした。
彼女はブツブツ言いながら古いシャツをハサミで切り刻む。
「太陽に文句を言っても、仕方が無いよ」
お気に入りの服を汚したくない君には僕の声は届かない。

週末、天気予報が外れた。久々の快晴だ。
僕は約束の時間に彼女を迎えに行く。
彼女の部屋の窓から、テルテルボウズが顔を出した。

つゆのあとさき

蕾の頃……雨が待ち遠しかった。
乾燥した空気がふたりの間をドライにする。

咲き始め……僕の心に雨が降り始めた。
湿った風が彼女を僕から遠ざける。

五分咲き……大粒の雨が花びらを散らす。
僕の彼女への想いが散ってゆく。
悔しかった。誰にも彼女を渡したくなかった……。
雨よ、もっと降れ、もっと強く。
僕は天を仰ぎ、膝をついた。

満開……梅雨の中休み。太陽がそっと顔をのぞかせる。
「ごめんね。これからは、ずっと一緒よ……」
バラの香りに誘われて、彼女が僕の前に姿を現した。
もうじき、彼女の嫌いな梅雨が終わるだろう。
もうじき、彼女の好きな夏が来ます。

バチェラー・ガール "Bachelor Girl"

僕と仕事、どっちが大事なの……?
雨音がショパンの別れの曲を奏でている。
今の彼女は、昔の僕自身……。

私にとって、これはチャンスなのよ。わかって……。
君の目は僕を通り越して、明日を見つめている。

君の傘が大粒の雨を僕の顔に弾いた。
頭の中で微かに、懐かしい笑い声が聞こえる。
昔の彼女は、今の僕自身……。

『私と仕事、どっちが大事なの……?』
昔、傷つけてしまった女性に復讐された……。

オリンピック "The Olympic"

古代の神々に人類がどれだけ進化したのかを示す日
孤独だった神々は寂しさのあまり、自分に似せて人類を創造した
オリンピック。それは人類がどれだけ神に近づいたのかを示す日

世界中から強靭な肉体と精神を兼ね備えた人々が集うが、
それは努力無くして得られない
オリンピック。それは唯一、人類共通の神聖なる儀式

勝者と敗者。勝者は神々から祝福され、敗者は……

たとえ、メダルが獲れなくても
たとえ、努力が実らず涙しても
私たちは、あなたを笑ったりしません
私たちは、あなたの努力を馬鹿にしません

あなたの家族、そして友人たちは知っています
あなたはオリンピックの主人公なのだと
あなたを応援した、世界中の誰もが知っています
彼らにとって、あなたが主人公なのだと

25℃ "SMOKE GETS IN YOUR EYES"

狭い部屋だとすぐに暖まるね。
室温25度。外との温度差は30度近くある。
「寒いと思うと心も冷え切っちゃうわよ」
彼女は押入れの中から夏服を引っ張り出した。
僕はストーブの炎を見つめながら、そっとタバコに火をつける。
広い庭の家に住み、犬を飼うのが彼女の夢。
金持ちと一緒になれば夢がかなったのに……。
何故、貧しい絵描きの僕を選んだの? 
僕は才能が無い自分自身を恨んだ。
「どうしたの?」
彼女が僕の顔を心配そうに覗き込む。
「タバコの煙が目にしみただけさ」
僕は涙目で精一杯の笑顔をつくった。