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恋人たちの季節 第四章 - 詩集

恋人たちの季節 第四章

 

恋人たちの季節 第四章

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白昼夢 "DAY DREAMING"

君は誰? 何でそんなに悲しい目をしているの?
手術で光を取り戻してから、毎晩のように同じ夢を見る。

交差点で名前を呼ばれた気がして足を止める。
目の前で交通事故があった。
それは夢の中の女性の声だった。
それからも何度も彼女に命を救われた。

一年前、僕たちは新婚旅行に出かける途中で事故に巻き込まれた。
何で思い出せなかったんだろう? 一番大切な女性なのに……。
今は一緒に逝けないけど、心の片隅に君を住まわせてあげる。
僕たちの新婚生活が始まった。

自由 "JIYUU"

民族の血と汗と涙が染み込んだ力の無い大地。
僕は彼女に命を救われ、黒い瞳と美しい黒髪に恋をした。
「向こうの世界には自由がある。だから僕と一緒に行こう」
彼女は首を横に振る。
「私の家族と仲間たちは、私の目の前で殺されました」
彼女は冷静に僕にそう告げた……。

今も世界の何処かで誰かが涙を流している。
いつになったら悲しみや苦しみ、柵から人類は解放されるのだろう?
一ヵ月後、彼女は祖国の夜空を飾る美しい星になった。

くちづけ "Kiss over a cup of hot chocolate"

二人だけで田舎暮らしを始めた。
冬から春へと季節が流れ出す。
二人だけで家の修復を始めた。
朝から気持ちの良い汗を流す。

僕の飲みかけのココアのカップ。
僕の目を盗んで、そっと君がくちづける。

僕の妹 "My little sister"

薄い日差しの中、着膨れした年頃の女の子が、地べたに平気で腰を降ろす。
着痩せした僕が、彼女の隣にそっと腰を降ろした。

妹は僕が結婚するまで誰とも結婚しないと言う。
僕は妹が結婚するまで誰とも結婚しないつもりでいる。
血の繋がりの無い、二人だけの兄妹。
ずっと二人だけで生きてきたんだ、ずっとこのままでもいいと思っていた。
この時、僕たちは春の訪れに気がつかないでいた。

温泉に行こう "Let's go hot spring"

えんやーとっと、えんやーとっと

温泉好きの彼女。
青い瞳の彼女は何処で覚えたのか、
お湯に浸かるたびにこのフレーズを延々と口ずさむ。

えんやーとっと、えんやーとっと

たどたどしい日本語が、僕には可愛い。

『教室 "School days"

彼女とは三年間同じクラスだった。
病気がちな彼女は病院で大半を過ごした。

卒業と言う別れを惜しむ者はいる。
だけど、教室に敬意をはらう者は彼女だけだった。

進学する者、就職する者、その他もろもろ。
僕は来月から働きながら、彼女の見舞い客になる。

アバンチュール "Aventure"

春になり、僕は南へと旅立つ。
初めは遊びだった。だけど、時と共に本気になっていた。
一夜限りの女性との再会を夢見る渡り鳥。

無駄なことだと、笑いたければ笑えばいいさ。
僕は毎年、同じ日にこのホテルに予約を入れている。

桜の木のしたで "Cherry blossom"

雪の日に早く育てと花に水やる優しい子。
誰が馬鹿に出来ようか?

季節の悪戯で時を違えた春の蝉の音。
誰が馬鹿に出来ようか?

桜は雪に恋をする。恋しさあまりに散り急ぐ。
誰が馬鹿に出来ようか?

君に似た女性に恋をした。桜の下で待ち合わせ。
君は許してくれようか?

神様だけが見ていた

この街で貧しい二人が出会い、そして恋をした。
今日、小さな教会で二人は愛を誓う。

彼女はカーテンの生地でウエディング・ドレスを仕立てた。
彼は背広に手製の蝶ネクタイをした。

祝福する者と異を唱える者は誰も参列していない。
ナザレのイエス、ユダヤの王だけが優しく二人を見守っている。

この街で孤独な二人が出会い、そして恋に落ちた。
今日から二人は、神の愛に永遠に守られる。

春告げ鳥 "Bush warbler"

「夢を諦めないで」
あの日、君は僕に辛くあたり、涙目でそう言った。

僕の就職先が決まり、社宅での生活に入った。
彼女は捨てられていた子犬を小さな庭で飼い始めた。
愛する者を傷つける夢なら、そんなもの、要らないよ。
僕は自分の無謀な夢と引き換えに彼女との生活を選んだんだ。
庭に植えられた梅ノ木に春告げ鳥がとまる。
僕たちの遅い春を知らせに来てくれたみたいだ。
僕は何も後悔はしていないさ、
子犬と遊ぶ君の笑顔を毎日見ることが出来るのだからね。

「今度はあなたの番よ」
或る日、君が若草色のスケッチブックを買ってきた。