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恋人たちの季節 第三章 - 詩集

恋人たちの季節 第三章

 

恋人たちの季節 第三章

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小春日和

天気の良い日は外に出よう。
お天道様が心と身体を温めてくれるからね。
いつもの海が見える公園に来ると、先客がいた。
やばい、目が合ってしまった。
すると彼女はニコリと笑って、荷物を片方に寄せてくれた。
天気の良い日は外に出よう。
きっと、お天道様が……。

晩鐘

ずっと君は無言だった。
次の交差点で君は右、僕は左へと曲がる。
この日が来るなんて夢にも思わなかったよ……。
君は振り返りもせずに横断歩道を渡る。
落ち葉が風に吹かれるように人影まばらな交差点。
もう一度、君の笑顔に会いたいよ……。
僕は立ち止まり、君の後姿を眼で追いながら、ひたすら祈り続けた。
鐘の音が静かに別れを告げる。
そして今、時が止まった。

マドンナ

工事現場に咲いた一輪の花。
彼女はいつも口の汚いオッチャンたちと対等にやりあっていた。
そんな彼女が突然、仕事を辞めると言い出した。
そう、彼女は何処かの馬の骨に嫁いでいくのだ。
定刻になり、彼女は夕日に照らされていた。
彼女の最後の姿を見たオッチャンたちの目からは鼻水が流れ出していた。
みんな彼女が好きだったんだ……。

ハートのコンパクト

中学生の頃、
おもちゃのコンパクトを好きだった女の子に買ってあげたことがある……。

親父が仕事で負けて、この街を出てから10年が経とうとしていた。
社会人となった僕は、思い出のある喫茶店を訪れた。
窓際の席に女性がひとり座っている。
綺麗になったね。
誰だか分からなかったよ……でも、イタズラ好きは変わってないね。
魔法のコンパクトが僕たちふたりを引き合わせてくれた。

冬の宝

僕が欲しかったのは恋人じゃなく、本当の友達だった……。
都会に出て一人で居るのが寂しくて、
本当の自分を隠すことが出来る電脳空間に逃げ込み、
架空の自分を演じ続けていた。
虚しさを感じ、机の引出しを整理していたら、
読まずにしまって置いた封筒が出てきた。
僕を心配してくれている手書きの文章、
そして君の笑顔の写真……。
僕は君の写真を胸に抱きしめていた。
その暖かさに触れて涙がこぼれたよ。
もう強がるのはよそう。
年が明ける前に、僕は故郷に帰ることを決意した。

祈り "Prayer for peace"

神様が全能だなんて嘘だと思う。
神様が全能なら、何で人間を完璧に創らなかったのだろう?
人間が完璧なら、誰も苦しんだり、悲しまなかったのに。
私たちはこの世に幸せになるために生まれてきた。
だから祈るんだ、夢と希望を忘れないように。
この混沌とした世界の中で、愛する人たちが幸せでありますように。

冬物語 "Winter Story"

冬山登山で遭難した僕を助けてくれたのは孤独な彼女だった。
二人で数日間山小屋で過ごし、彼女の心の暖かさを僕は知った。
吹雪が止み、彼女が里までの道を案内してくれることになった。

「帰っても誰も待ってやしない……
もし、君が僕のことを永遠に愛しつづけてくれるのなら、
僕はここに残ってもいいよ……」

僕は心の言葉を彼女に伝えた。
さっきまで悲しそうな顔をしていた彼女は微笑を浮かべた。
そして僕たち二人は誰も知らない世界へと旅立った。

春日(はるひ) "She resembled the woman whom I loved"

人影まばらな神社にて、そっと恋した女性の名前を呟いてみる。
風花の名残を惜しむ桜吹雪を待ちきれなかった君。
一番近くに居たはずなのに、好きだと言えずに終わった恋だった。
君に似た背に声を掛け、振り向いた顔が何故か悲しい。

彼女の部屋 "Goodbye Day"

君の欲しいものは何でも買ってあげた。
それが愛情の深さなのだと信じていた…。

すでに必要なものは引越し先へと送られている。
残されたものは僕が贈った品ばかり。
「一緒に過ごす時間が欲しかっただけ……」
君はそっと涙を拭った。
最後の言葉が氷の矢となって、僕の凍てついた心に突き刺さる。

主を無くした部屋には、ブランドと言う名のガラクタと膝を抱えた僕だけが残された。

真冬の太陽 "YOU MAKE ME HAPPY"

凍てついた心をバターのように溶かしてくれた君は、まるで太陽だった。
都会での暮らしにケリをつけ、お袋に電話したら受話器の向こうで泣いていた。
親父の「早く帰って来い」がとても暖かく、嬉しかった。
何で気が付かなかったんだろう? 僕は独りぼっちじゃなかったのに……。

一時間遅れのバスが故郷へと僕を運ぶ。
いつの間に、雪が止んでいる。
故郷を離れたのもこんな天気だった。
バスを降りた僕は大きく深呼吸する。
何もかもがあの日のまま、何も変わらない。
真冬の太陽が、バスの待合所から顔を出した。